こんにちは、池袋東口託児所「つながり」、保育士の柚木です。
お子さんと一緒に過ごしていると絵本や映像で見たことをまるで本当にある事のような言動をすることがありませんか?
そこにあるはずの無い物を本当に見えているかのような行動は一見お子さんが嘘をついて大人をからかっているのか、または何か異常があるのではないのかと感じてしまいますが、実はこれは子どもの成長にとっては全く問題がない自然な事なのです。
今回はこの不思議な行動について子どもの成長・発達の段階、周囲がどのように関わっていくのかまとめていきたいと思います。
目次
子どもの想像と現実の区別
まず、そもそもなぜ子どもはそんな言動をしてしまうのかというと、想像と現実の区別がまだあまりついていないからなのです。
実は子どもは6歳ぐらいまで想像と現実の区別があまりついていません。
子どもの成長・発達とともに想像した架空の事柄と実際の現実の事柄が段々と区別できるようになってきますが、想像と現実の区別がついていない子どもは実際にあるはずの無い事柄をまるでそこに現実としてあるかのような言動をしてしまうのです。
そして6歳ぐらいになり想像と現実の区別がつくようになると言動も段々と想像と現実を区別したものとなってきます。
ですから周囲の大人が子どもの言動を無理にやめさせようとしなくても成長するにつれて自然に見られなくなってきます。
子どもが想像と現実を混ぜてしまうのはどんな時
次に子どもが想像と現実が混ざった言動をしてしまうのはどのような時かというと、絵本やテレビなどの映像を見た直後が一番多くなります。
これは見たものに興味を持てば持つほど、それがあたかも現実にある事なのだと認識し、まるで目の前にその現実が広がっているかのような言動をしてしまうのです。
例えば保育園で妖精の絵本を読み聞かせた後、公園にお散歩に出かけると、一人の子どもが「あ!あそこに妖精がいるよ!みてみて!」と言うと他の子ども達も「ほんとだ!あ、向こうにもいる!」と子ども達みんなで盛り上がり、公園で妖精探しが始まる事があります。
この時子ども達は嘘をついているわけでもなく、ごっこ遊びをしているわけでもありません。
子どもには本当にそこに妖精がいる様子が現実のこととして見えるのです。
また、子ども達がテレビでヒーロー・ヒロインを見て、現実に存在している人物だと思い込んでしまうのも想像と現実が混ざってしまっている一例といえます。
さらに子どもは夢で見たことも現実の事としてとらえてしまう事があります。
普段やらないような事を急にやり始めたり、大人から見たら大したことが無い事でもパニックになって泣いてしまう、大人が大丈夫と伝えてもいつまでも納得せず頑として聞き入れない等、不可解な行動をとってしまう事もあります。
この時、子どもに話を聞いて原因を探っていくと最初はわからないと言っていても、根気よく聞いていくと実は夢で見たことが原因で行動していたなんてこともあるのです。
子どもには想像=現実
前項の通り子ども達は絵本や映像、夢で見たことを現実の事として受け止めています。
もっと言えば子ども達は絵本や映像、夢で見たことを「体験」していると言えるのです。
この「体験」についての一例にこのようなものがあります。
絵本の読み聞かせで動物が慌てて逃げて、他の動物も一緒になって逃げてと読み聞かせていると、子ども達の中に「は~は~」と息せき切っている子が現れました。
この時子ども達は自分が動物になって逃げている事を実際に「体験」し、本当に息まで荒くなってしまったのです。
つまり子ども達は想像の世界を現実のこととして「体験」しているからこそ、想像と現実の区別がつかず想像=現実となっているのです。
この「体験」した想像を現実の事として受け止めているため、想像の世界をそこにある現実の世界として認識しているのです。
子どもの想像と現実にどう関わっていくか
子ども達は6歳ぐらいまで想像と現実の区別があまりつかないとご説明してきましたが、幼児期というのは人生の中で唯一、想像の世界で見たり聞いたりしたことを「現実」の出来事として体験できる、貴重な時間です。
大人にとっては「えー、ホントに?」とつい疑いたくなってしまうものですが、子ども達は嘘をついているわけでもなく、ごっこ遊びをしているわけでもなく、想像=現実のこととして見え、体験しています。
これを嘘をついている、こだわりが強いなど杓子定規な事としてとらえてしまうと大人はその意味不明な行動に対してストレスを感じるようになってしまいます。
確かに一見そのようにも見えてしまいますが、子どもは大人が考えるのとは別の理由があって、その言動をしている訳です。
これは、幼児特有のものであり、あまり心配する必要はありません。
むしろその話を否定するのではなく一緒に体験してあげると子どもからの信頼は増していくはずです。
一つ注意する事としては、叱られるのが嫌だったり、誰かに認められたくてそのような話をする場合です。
そのような場合には嘘をついたこと自体を叱っても、あまり効果はありません。
それよりも悪いことをしても何か失敗をしても正直に言えた時にはきちんと言えたこと自体を認め、褒めることで大人にきちんと話ができるようになっていきます。
あまりに嘘をつく頻度が多い場合には、もっと認めてほしい、自分を見てほしい、というような気持ち表れかもしれません。
嘘に注目するのではなく、お子さんの良い行動や素敵な部分を大人がたくさん見つけ、ほめて認めることでお子さんの自信を育て、大人との信頼関係も強めていきましょう。
まとめ
子どもの想像と現実の関係性がどんなものか、そして周りの大人はどのように関わっていくのか、まとめてみましたがいかがだったでしょうか。
子どもが想像と現実の区別がつかないというのは普通のことであまり心配する事では無く、年齢が上がるにつれて、現実と想像の世界の境ができていきます。
なんでも子どもの行動は理解不能と一方的に片づけてしまう前に、一度お子様が見ている景色を覗いてみてください。
そこでどのように関わっていくかで子どもとの信頼関係を築けるか、子どもの「体験」をどれだけ認めて、お子様自身の世界を広げてあげられるのか、それがその後のお子様の成長、大人との関係を形作っていく大切な要素になるという事を意識してみてください。